会の第一線級のメンバーは雪深い山へ入るのだろうけれど、やや盛りを過ぎた“顧問クラス”の初歩きの計画に生かせる山やコースを三回ほど紹介しましょう。
今回は外房の花と伝説の島-仁右衛門島を訪ね、外房海岸にそそり立つ岩山-漁師の信仰厚い天面浅間山歩きをまとめて一日の日程とするコースを紹介したい。
房総の山や島には、日本武尊、源頼朝や平将門などの伝説が残るものが多い。その中で今回は頼朝と日蓮伝説だ。
鴨川市太海の海にぽっかり浮かぶ三万平方メートルの島は、房総一の大きさを誇り、島内の屋敷や奇岩・洞窟には源頼朝や日蓮が隠れ住んでいたと言われ、それなりの名前が付けられているのも面白い。
冬枯れの時季にソテツや黒松の深い緑が鮮やかだ。その中に咲く白い水仙の花や、橙色のアロエの花が“南国”らしさを演出している。
島に渡るのに利用する二丁櫓の手漕ぎ船が“旅情”を盛り上げてくれる。渡し船のある港の魚屋の干物やシオカラの味は格別だ。
島を一周した後は、国道へ出て館山方面に五百メートルほど進むと天面湾の一番奥に突き当たる。ここから頭上にそそり立つ白い岩壁の浅間山に登ろう。
国道の右側にJRの線路が通り、そのガードをくぐったところが登山口になっている。細々とした草深い登山口と、見上げる白い岩壁とで、“本当にここから登れるのか”と多少不安になる。線路沿いの道は小さい畑の花を通るので、地元の人に会ったら声をかけるようにしよう。
線路から離れた山路は二つの滝にぶつかる。山が小さいので滝水は水滴程度だが、滝際には石の祠や不動の石像もあり、横穴の中には仏像も安置されていて、“信仰”の山、“行場”だったことを物語っている。
滝を越え白い岩の崖に細くつけられている石段を気をつけて慎重に登ろう。ジグザグを切って登り詰め、樹林の中を過ぎると、小さな平ら地に出て、社が建っているのが見える。その手前には狛犬らしきものが祀られている。
よく見ると狛犬ではなく、コマザルです。子ザルを抱えたもの、ゴヘイを持ったものもおもしろい。ここに荷物を置いて岩壁の突端に出てみよう。
木の切れているところからは、足元に澄んだ海面が広がり、遠く千倉の山、ピラミッド型の三角は高塚山だ。海から吹き上げてくる早春の汐風のなかでの昼食にすれば、最高の時間になるだろう。
下山は今来た路をたどるのが安全だ。時間にゆとりがあれば、海の道の駅“鴨川オーシャンパーク”に寄り、その先の名馬“太夫黒”の出生伝説のある浪切不動と不動滝を眺めるのもおすすめだ。天面浅間
山の裏にある宮下温泉“こがね荘”の温泉は真っ黒の湯。ここで一汗流すのも、通のコース取りとなるだろう。
- 仁右衛門島への交通
- 宮下温泉“こがね荘”
JR内房線太海駅より徒歩12分、渡し舟で約5分。
1350円、中学生1050円、5歳~小学生950円(往復乗船料、島の観覧料)。
午前8時半から午後5時まで随時運行。
なお浅瀬で距離も近いので泳いで上陸もできるが、冬場は避けるのが無難。渡し舟は手漕ぎ。
電話番号 04-7092-9402
アクセス JR内房線太海駅から日東バス曽呂行き「終点」下車徒歩3分
JR外房線安房鴨川駅からタクシーで8分