源泉の湧く七里川渓谷を歩く

-夏季に涼を求めて・・・-

小雨予報の出ている今年の夏。たぶんうだるような夏になるのではないか。地球温暖化防止のために、そうやすやすとクーラーを点けるわけには行くまい。

だとすれば、北へでも行くか、それとも上越の奥利根の沢へでも逃げ込むか。すんなり行ければ悩みはないのだが、気の合う仲間の都合、先立つもの、いろんな障害があってなかなか思うようにならない。

そんな県連の仲間を“ちばの沢の中バシャバシャ歩き”にお誘いします。

一人歩きでも安心、親子連れでも、お孫さん連れでも安心できるのが亀山ダム湖の上流、七里川の渓流歩きです。歩きながら腰を曲げて岩の下にそっと手を差し込むとヌルっと触れるものがいます。ハヤ(ウグイ)です。

銀色に光ればヤマベ、ヒゲをはやしていたらギバチかナマズの赤ちゃんです。ギバチやナマズは針に刺されるので要注意。そうです、人があまり歩かないので魚類が「人ずれ」していないのです。手づかみでOKです。

日陰の川原でストーブを出して唐揚げすれば最高、頭から尻っぽまで食べられます。

腰を下ろして一服すると、すぐ先の岩には何やらカエルがこっちを見ています。殿様ガエルではなく、ヒキガエルでもなし、それは河鹿ガエルです。朝や夕方、日が陰る頃に河面に鳴き声が響き渡ります。セミのような、鹿のような鳴き声に涼しさを感じます。

何ヶ所かある岸の岩場にはイワタバコがぶらさがって紫の星形の花をつけています。咲いている花もすてきだが、花が落ちて水面をただよう姿もすてがたいものがあります。

それに川の中に何ヶ所も硫黄温泉の源泉が湧き出しています。近寄ってそれを手にすくって鼻に当ててごらんなさい。タマゴの腐ったような、独特のにおいがします、七里川温泉も、上流の白岩温泉も、これの源泉を汲み上げて加熱して、温泉として提供しているのです(正式には冷泉なので鉱泉と呼んだ方がいいのだろうが規制緩和で温度に関係なく温泉と呼べるようになりました。)。

横道にそれましたが、歩くことにしましょう。

先ずおすすめは黄和田トンネルの先から七里川に降り、ヒザ下の深さの川を約一時間半で吊り橋にぶつかります。そのすぐ手前の川の中の岩場の上に小さなほこらが、水神様をおまつりしたのです。この吊り橋から県道に出て七里川温泉に戻るコースは軽めのコースです。

もうちょっと歩きたい人は、さらに吊り橋から上流に進みます。これから先の川の床は岩になります。洗濯板みたいな川床の中を進めば元国体コースの一本橋の跡。今は流されてしまって橋はありません。ここからさらに30分で左岸から小沢が流れ込んでいます。これはキンダン川の出合。この出合に二ヶ所温泉汲み上げ施設があります。

オートキャンプ場千石の湯と白岩温泉の湯のものです。この先の右岸の小道をあがれば、一軒宿の白岩温泉の前にとび出します。300メートル先の白岩橋から上がる方がいいかな(山ビルよけのためにはその方がいいかも)。

白岩温泉は筆者のおすすめの宿。美人のママは気っぷがいいし、露天風呂も情緒があっていい。

満点の夜の風呂ならいうことなし。手造りのコンニャクの刺身もうまいし、近所で造ってくれるトマトの甘さが絶品。

イノシシのステーキも予約すればOK。

建物は君津市、お風呂は鴨川市、まさに“国境の温泉”そのもの。千葉県ばなれした渓と温泉を組み合われば暑い夏も“平気の平左”。みんなの財産といえる七里川渓谷歩きをおすすめします。

(記 – ふわくHC鵜沢さん)

【注意事項】
渓に入るときの草の中や木の下に山ビルがいるので、塩水や木サク液をふりかけて吸い付かれるのを予防すること。水の中、川の中にはヒルはいません。

七里川温泉、白岩温泉利用の時は電話予約をすること。

  • 七里川温泉 0439-39-3211
  • 白岩温泉 0439-39-2666

渓の中は、磯タビ、沢タビ、渓流シューズ、ワラジがよい。

使い古したスニーカーに荒縄を二~三巻きしても滑り防止になる。

問い合わせは、0470-62-0120 ふわくHC鵜沢さんまで

今から七年前のこと、この七里川渓谷を堰き止める「追原ダム」の計画が持ち上がった。これに対して“雨が降っても濁らない川”を子供たちに遺そうと、県連は「追原ダム計画中止」の運動に立ち上がった。

それから三年の間、七里川を歩き、クリーンハイクでゴミを拾い、七里川渓谷と隠れ里・追原の巨樹を残そうと運動し、計画中止に追い込んだ。この、県連の財産といえる、渓谷を歩くことを改めて提案したい。